[論説]基本計画策定大詰め 食料安保の施策強めよ
昨年施行された改正食料・農業・農村基本法は、食料自給率目標の他にも、食料安保に関わる目標を基本計画で定めることとした。農水省は基本計画で約30の目標を設け、その達成に向けた進捗(しんちょく)を管理する指標(KPI)も数多く設定する方針だ。
目標には、肥料や飼料といった生産資材の備蓄や、農地面積の確保といった生産基盤に関わるものが並ぶ。ただ、農地と両輪で基盤を支える農業者確保の数値目標設定は、掲げられていない。
この判断は疑問が残る。同省は、農業者の減少は機械化やスマート化で「一定に穴埋めできる」と指摘する。だが、機械化以外に人手が必要な農作業は多く、農村は大規模化や集約化が可能な平場ばかりではない。中山間地域など条件不利地の振興が置き去りにされてはならない。今こそ農業生産に関わる多様な人材の確保・活躍が必要だ。農業者の確保に向けた強いメッセージとなる目標設定を求めたい。
基本計画は、農業経営の安定を中長期的に支える制度をどう構築するか、重要な指針になる。主軸になるのが「水田活用の直接支払交付金(水活)」だ。同省は2027年度以降、水田を対象とする現在の仕組みから、作物ごとの生産性向上を支援する仕組みに転換する方針を示した。
長年議論となっていた「水張り」を求めないこととし、麦、大豆、飼料作物は田畑に限らず支援を検討。飼料の生産は飼料用米中心の生産体系を見直し、青刈りトウモロコシなどを振興する方針だ。
いずれも大きな農政転換となる。「水張り」を巡る不公平感の解消や、飼料用米の支援が縮小されるのではないかという現場の懸念をどう払拭するのか。既存の支援水準を維持・強化できるのかなど、不安の解消に向けた丁寧な説明も求めたい。中山間地域等直接支払制度の支援拡充や環境直接支払制度の新設を含め、多様な農業者の営農継続を支える制度へ、具体的な道筋を示してほしい。
豪雪や山火事などの自然災害が頻発化・激甚化する中、セーフティーネット(安全網)の充実は急務だ。肥料高騰時の影響緩和対策を掲げた一方、収入保険などを念頭に「類似制度の集約」を検討する方針も示した。現場の声を反映し、将来への展望が描ける計画立案を強く求めたい。