[論説]頻発する地震、災害 北海道、三陸沖にも注意
東日本大震災の発生から14年が過ぎたが、政府地震調査委員会の平田直委員長(東京大名誉教授)は「東北の海と陸の動きは、震災発生直後と変わっていない」と注意を促す。南海トラフ沿いの大規模地震が発生する可能性についても、1月に同委員会は、マグニチュード(M)8~9を想定する南海トラフ巨大地震の30年以内の発生確率を「70~80%」から「80%程度」に引き上げた。「いつ起きてもおかしくない」(平田委員長)状況とし、対策を促す。
政府は、2026年度の防災庁設置に向け、1月末から有識者会議の議論を始めた。今後想定される大規模災害には、南海トラフ巨大地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、首都直下型地震、富士山噴火などが挙がっている。防災や医療、土木、建設など先行して取り組める対策は、早急に着手してほしい。
政府の有識者検討会は3月末をめどに、南海トラフ巨大地震の新たな被害想定を公表する。12年には「死者は最大32万3000人に上る」としたが、被害想定がどう見直されるのかも注視したい。
ただ、対応が必要なのは南海トラフ巨大地震だけではない。気象庁が22年12月から運用を始めた「北海道・三陸沖後発地震注意情報」にも関心を持ってほしい。北海道の根室沖から東北三陸沖にかけてM7程度の地震が発生すれば、その影響は広範囲に及ぶ可能性がある。
同庁は北海道から千葉までの7道県182市町村に対し、津波警報が出た場合の避難準備などを求めるが、認知度は低い。地震や津波、火事などの災害を「自分事」と捉え、今のうちから命を守る備えを進めておく必要がある。
まずは、自らの命を守ることを最優先してほしい。自宅の家具の固定、窓ガラスの飛散防止は万全か。津波の危険があれば、家族と避難ルートは確認しているか。避難所の場所や安否確認の方法、1週間分の水や食料など備蓄品の入れ替えも欠かせない。
大地震が発生するたびに、避難所の収容力やプライバシーの確保、段ボールベッドの用意、清潔なトイレの設置など課題が持ち上がる。政府は24年度補正予算で、能登半島地震を教訓に避難所環境の改善などに向け、22億円を計上した。地元自治体との結び付きを強くし、災害への備えを進めよう。