[論説]地方創生2・0 無意識の偏見解消が鍵
日本創成会議が、消滅可能性のある自治体を指摘し、話題となったのは2014年。それ以降、第2次安倍改造内閣で「地方創生元年」を宣言し、石破茂首相が初代の地方創生相を務め、「『まち・ひと・しごと創生法』の制定や政府関係機関の地方移転など進めてきた。各自治体も子育て支援などに取り組んできたが、地方から東京圏への一極集中は依然として続いている。
このため石破首相は「地方創生2・0」として再起動を表明。昨年12月、政府は基本的な考え方を決定した。その中で「地域・男女間の賃金格差と並んで、さまざまな場面にあるアンコンシャスバイアスなどにより若者・女性の地方離れが進行」していると指摘した。地方ほど男性は仕事、女性は仕事に加えて家事・育児……。そんな無意識の偏見は根強く、女性も声が上げにくい。人権に関わる根源的な問題で、ここを改善しない限り、若者や女性の流出は止まらないだろう。
農家女性からは、年代を問わず「地方は生きづらい」との声が上がる。「地域の会合で発言すると嫌な顔をされる」(70代)、「道を歩いていて前から男性が来ると、女性がよけなければならない」(60代)と嘆く女性もいる。
若い世代も同様だ。30代女性は「家事・育児は女性の仕事といわれ、義務教育で教わった男女平等は何だったのか」と問う。地方出身の女子大学生は、うわさ話がすぐ広まる、女性が働く企業が限定されることなどを挙げ、「女性が地方に戻らないのは、多様な生き方が許されないから」と指摘した。こんなサイクルが延々と繰り返されれば、地方は一向に創生しない。誰もが暮らしやすい社会へ、今すぐ手を打つべきだ。
鳥取県は4月、「男女協働未来創造本部」を創設し、アンコンシャスバイアスの解消へ、草の根的な対話を通じて県民運動を展開する。農業分野でも動きが出ている。滋賀県と県農業法人協会は昨年、性別役割の偏見に理解を深めるセミナーを初開催した。農業・農村に残る古い慣習を話し合い、まずは「気付く」ことから始めよう。
政府の「地方創生2・0」は今夏、10年間で集中的に取り組む基本構想を策定する。地方創生は、誰もが輝ける社会をつくるために欠かせない政策であり、経済政策にもつながる。