[論説]JAの広報力 消費者理解は発信から
国産米や農畜産物の需給を巡る報道が盛んに行われている中、多くのメディアは「いつになったら米が値下がりするか」と価格面だけを強調して報道する傾向にある。確かに物価高が続き、生活は非常に厳しい。だが、農畜産物の価格を引き下げれば、資材高に苦しむ農業経営が成り立たなくなる。農家が持続可能な経営ができる適正な価格を維持することが重要だ。
求められるのが、農場と食卓をつなぐJAの広報力の強化だ。なぜ高齢化は進み、担い手が増えないのか、なぜ農地は減るのか、食料自給率(カロリーベース)はなぜ38%にとどまっているのかなど、分かりやすく農業の現状を伝え、消費者の理解や納得、共感につなげる必要がある。
JAトップの理解も欠かせない。JAならけんの村本佳宜経営管理委員会会長は「地域農業を守り発展させるには、今後一層、生産現場を消費者に理解してもらう必要がある」と指摘、「消費者が現場を知り、適正な価格で購入することで、生産が持続できる。お互いにとっていい関係性になる」と主張する。
JAグループ福岡は、県と共に県産農畜産物の消費拡大と適切な価格形成の理解醸成を目指し、2、3月限定で地元農家を紹介するテレビ番組を放送。後継者不足や資材高など農業の抱える課題も紹介する。トップ広報の一環として、JA福岡中央会の乗富幸雄会長も米農家として出演する予定だ。ざっくばらんに、ありのままの発信を心がけたい。
速報性を重視するのは、2024年度のJA広報大賞に選ばれたJAふくしま未来。「取材即配信」を合言葉に、質の高い広報活動を展開。トップ広報にも取り組み、数又清市組合長が新規就農者を訪れて、なぜ農業をしようと思ったのかなどインタビューする動画もある。特にスーパー営農指導員が教えるシリーズは人気で「小菊の挿し芽」は閲覧回数が3万を超えた。
昨秋の第30回JA全国大会での決議の一つに、「広報戦略を通じた農業・JAグループに対する理解醸成と戦略的な情報発信」がある。「国消国産」や地産地消を通し、生産者と消費者の垣根を低くし、食を支える農業を身近に感じられる仕掛けが必要だ。現場の情報を伝える力を磨くことが、食と農業の理解者を増やす一手となる。