[論説]国際水準GAP 農家負担減が普及の鍵
GAPは、作物の種まきから施肥、防除といった工程を記録し、点検・評価を通じて改善につなげる仕組み。農水省や都道府県などはチェック工程を示しており、試行のハードルは低い。取り入れられる項目から挑戦してほしい。
国際水準のGAPとなると、食品安全や環境保全、労働安全、人権保護、農場経営管理の5分野が含まれる。国は2030年に、ほぼ全ての産地で国際水準のGAPを実施する目標を掲げる。4月に始まる大阪・関西万博に食材を供給するには、東京五輪・パラリンピックと同じ国際水準GAPの取得が求められる。
都道府県独自のGAPを国際水準に引き上げる動きもある。島根県は22年に国際水準GAP「美味(おい)しまね認証」を始め、722経営体が取り組む(24年3月末)。同県では「複数の大手スーパーが旗振り役になっており、国内の販路拡大が期待できる」とみる。岐阜県も昨年4月、「ぎふ清流GAP評価制度」を国際水準に引き上げた。農業経営の改善を期待し、認証費用は1件当たり3300円と低く抑えたのが特徴。農水省は今後、都道府県版の国際水準GAPが増えるだろうとみる。
一方、民間が認証する国際水準GAPである「アジアGAP」や「グローバルGAP」は、計2684件(24年3月現在)で、近年はほぼ横ばいで推移する。農水省は国際水準GAPの認証取得を支援しようと25年度予算案に1億円の交付金を計上した。しかし「GAPは難しい」という農家側の心理的負担感は大きな課題。現場からは「一般的な農産物とGAP認証農産物の差別化が難しく、売り場でアピールしにくい」「GAPを取得しても適正な価格に反映されにくく、農家に実践してもらうのも大変」「一般的なGAPの浸透も十分ではく、国際水準GAPの推進は性急すぎる」との声も上がる。
資材高騰が長引く中で、民間の認証機関による国際水準GAPの認証費用がかさむことも、大きな負担となる。GAPは生産者だけでなく、流通業者が認証農産物を取り扱えば、消費者へのアピールにつながる。消費者が購入すれば、持続可能な開発目標(SDGs)への貢献につながる。安全を担保し、人権保護にも配慮したGAPは欠かせないが、認証取得のハードルを下げる対策が急務だ。