青果卸各社の2021年度決算報告で、「物流」を経営課題に挙げる社が相次いだ。物流は人手不足やコスト上昇が進み経営を圧迫する他、産地からの青果物仕入れでも大きな障壁になり、対応が急務だ。老朽化が進む市場の再整備も絡め、物流を制して産地、実需から選ばれる市場を目指す動きを追う。
ソフト・ハードで改善急ぐ
青果物を扱う東京都中央卸売市場9市場のうち、取扱高で過半のシェアを持つ大田市場。21年取扱高は2985億円と、20年前から3割増えた。荷物の一極集中は場内の混雑を招き、荷降ろし場所の不足や荷待ちの長時間化が課題になる。
最大卸の東京青果は、場内物流の要となる卸売り場の整備に踏み切った。2階建て施設を設け、21年7月までに順次稼働。2階は4000平方メートルで、約500トン分の追加収容が可能となった。


施設整備と並行し、ソフト面でも効率化を進める。18年、荷降ろし時間予約受け付けサイト「EPARKモール」を導入。予約車両は優先的に入場して荷待ち時間を減らせる他、届く商品や産地が事前に分かり、荷降ろし場所の差配も効率化。運転手の登録数は6000人に増えた。
人工知能(AI)を取り入れた対策にも乗り出した。場内を撮影した画像を基に、商品や車両の動態を分析。仲卸や買参人が効率よく引き取れる商品配置や、リフト・ターレが移動しやすい動線確保の対策を検討する。
場内物流の改善は、市場に届く商品を効率よくさばく方法もあるが、市場を介さない取引を増やす手もある。産地から、スーパーの配送センターや加工業者など実需者へ直接輸送する、商物分離だ。トラックに満載できる数量を確保し、大口需要者へ安定供給できる産地なら、直送の方が物流を効率化できるという考え方だ。
同社は現在、青果物取扱高の1割強で実需者への直送を実施。経営戦略室の中村岩生課長は「昨今の物流事情を考えると、サプライチェーン全体の合理化は必要。産地にとっても、相手の顔が見え価格安定につながる取引だ」として、提案を強化。ソフト・ハード両面で物流改善を急ぐ。