場内を配送・営業の拠点に
青果物を安定的に流通させる上で、市場が果たす役割は大きい。一方、不十分な低温管理や場内の混雑で、鮮度維持による有利販売といった産地の期待に応えられない市場もある。農水省によると、全国65の中央卸売市場のうち、大規模改修を40年以上していない市場は43%に上る(2020年度末時点)。
各地で検討が進む再整備のモデルとして注目されるのが、宮城県の石巻青果花き地方卸売市場(東松島市)だ。仙台市街地から高速で約40分、石巻港インターチェンジに近接する交通の要衝に2010年、移転開場した。
同市場の特徴は、機能的な場内物流と鮮度維持を可能とする施設設計だ。青果部は卸売棟と物流棟に分け、間に荷降ろし場を設置。大屋根を設け、雨風や日射を避けて荷降ろしできるようにした。
物流棟は三つの温度帯に分け、品目に適した低温保管を実施。トラックが接車して商品を積み込めるスペースも設置し、温度変化を与えずに効率よく青果物を配送できる。<下に続く>


近隣3市で5店舗展開する同社は、青果物の9割を石巻青果から仕入れる。あいのやの三浦正志青果バイヤー部長は「場内に配送、営業拠点ができ、非常に効率よく店舗配送ができる」と喜ぶ。
近年、仙台中心部と岩手県南部を結ぶ三陸沿岸の高速網が充実。周辺産地からのアクセスが向上し、石巻市場の集荷網は広がった。仙台との距離も縮まり、石巻市場の買参権を取得する仙台の業者が年々、増えている。
地場産の集荷に有利な立地、機能性に優れた場内設備、実需ニーズに応える敷地活用と、三拍子そろった運営を展開する石巻青果。21年度売上高は184億円と、増収を維持。巣ごもり需要の喪失で苦戦する卸が多い中、上位50社中5社しかいない、1%以上の営業利益率を確保した。
同社が設立50年の節目となる今年5月、新社長に就いた菊池和彦氏は、「品物に優しい市場として衛生、鮮度の評価を高め、JAと連携し集荷を強化する」と強調。地場産地と足元の商圏を固め、選ばれる市場へ進化を続ける。