日本農業新聞は7月29日、JAの事業・業務を変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)の意義や活用方法などを共有する「手が届き、無理なく始められるJA―DXセミナー」の第3弾をオンラインで開きました。「コミュニケーションアプリでつながる」をテーマに、組合員との接点づくりなど、アプリが持つ可能性やDXに対応するための組織改革の課題を共有しました。JAやIT企業の関係者ら157人が参加しました。
助け合いを広げる道具に コープこうべインターネット・デジタル推進統括・浜地研一氏

そうした体験から「暮らしの中で自然と使われる道具」を目指し、新たなアプリを企画しました。LINEのようなやりとりで商品注文ができる機能を持っています。デジタル組合員証やクーポン決済も始めました。若い世代の来店者数が増えたり、組合員と職員がつながったりといった成果が出ています。
これまで宅配カタログは紙で作ってきましたが、2030年には半分ぐらいになるのではないかと思います。
組合員が生協運営に参画する一歩となるよう、簡単に投票できる機能などを付けたアプリ「コープTOUCH」を作りました。一歩踏み出した人には、イベントに来たら2次元コード(QRコード)でポイントが付く仕組みにしました。
高齢の方のごみ捨てなど、日常の困り事に助けを求める人と助けたい人をつなぐ「たすけタッチ」という仕組みも運用し、アプリでのマッチングも始めています。助けてもらったら料金を渡すのですが、キャッシュレスで簡単に済ませることができるのが特徴です。地域の関係づくりに結び付いています。
「人にやさしいDX」を目指し、助け合いのプラットフォームを実現したいと考えています。組合員同士だけでなく、宅配の地域担当や生産者、バイヤー、店長、商品をアプリでつなぐ。組合員と職員が同じアプリを使うことで、ネットも現実もつながりやすくする。そういう姿を目指しています。
はまち・けんいち 1994年入組。2000年にネット関連の部署に異動。以来、アプリ開発などに携わる。「生協は物を売る電子商取引(EC)と違い、コミュニケーションを大切にしたい」とこだわる。
農の健康効果「見える化」 VIVIT社長・伊藤光一氏

手術後の患者が常に緑を見ることができる環境にいると、痛みや不安が軽減されて、回復も早いという報告があります。
こうした点に着目し、もっと緑に触れようという取り組みがいろいろな企業で始まっています。
農業をやると脳が活性化し、ストレスが解消できることをデータで示し、半農半Xや週末農業、ワーケーションで農業を体験する人を増やしたいです。その際、活用できるのがわが社のアプリ「CORE―FULL(コアフル)」です。
コアフルは、スマートフォンで自律神経を分析し、脳の疲れとストレスを「見える化」します。農作業や土に触れることで「ストレスや脳の疲れが下がった」と実感できます。これによって、週末は子どもと一緒に農作物を育てるなど、ウェルビーイングな暮らしを実現して農に携わる人を増やし、農業の活性化につなげたいと考えています。
いとう・こういち 同社は2006年設立。スマホカメラを活用したアプリ「CORE―FULL」などを手がける。官民連携の「デジタル田園都市国家構想応援団」の運営理事も務めている。
組織全体でスキル開発を リクルートワークス研究所主任研究員・大嶋寧子氏

「1」は、組織のトップのリスキリングです。トップがデジタルを学ぶ時は、どんなことができるようになるかを大づかみで押さえた後、従業員や顧客のために、やりたいことに焦点を当てて、関連する事例や技術を学ぶことが重要です。
「3」は、従業員のためのリスキリング3種類です。一つ目は「使いこなし」。新しいデジタルツールや仕事のやり方に習熟し、これまでの価値を生み出せるようにする必要があります。二つ目は「変化の創出」。自らデジタルを活用して課題解決を企画、提案し推進できるようにすることです。三つ目は、DXでビジネス領域が変わり、新たに生まれる仕事に移行する「変化への対応」です。
全従業員が新しい仕事に移行できるよう、三つのポイントを見極めた取り組みが重要です。
おおしま・やすこ 同研究所でリスキリング研究プロジェクトのリーダーを務める。DXで先行する従業員500人以下の企業への聞き取り調査などに基づき、リスキリングの傾向や課題を分析。
動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=Grkk84Urx4o
業務で使うアプリは? LINEが最多

LINEに次いで、ウェブ会議に使う「Zoom」、主に画像や動画を投稿する「インスタグラム」などが上位に入りました。フェイスブック、ユーチューブの利用も2割を超えており、交流サイト(SNS)の広報利用が一定に広がっています。
デジタルを学ぶ研究会設立へ
日本農業新聞は、協同を強くするためのデジタル化を進める「JA―DX推進研究会」を設立します。
デジタルに志のあるJAと一から学び、デジタル人材の育成や課題解決のための活用方策を研究していきます。
研究会参加希望JA、企業の事前エントリーを8月16日から本紙のLINE公式アカウントで開始します。QRコードからアクセスして、詳細案内をご覧ください。