高崎には、B級グルメを特集する番組などでよく取り上げられる「シャンゴ」というパスタ屋さんがあります。「シャンゴ風パスタ」というメニューが名物で、パスタの上にちょっと甘めのミートソースがかかっていて、さらに薄いカツが載っているんですね。
父がこれが大好きで、これしか食べなかったといっていいくらい。母と私は、トマトソースやモッツァレラチーズのパスタなど別のものを頼んで、シェアしていました。
もう一軒、うちの近所に「シルクロード」というパスタ屋さんがありまして、そこにも看板メニューがあるんですよ。「ローマ法王風パスタ」という名前のスープパスタです。それ、やっぱり父が好きで(笑)。
父が亡くなってかれこれ2年半ほどたちます。地元に帰るとパスタ屋さんに行き、家族で「シャンゴ風パスタ」や「ローマ法王風パスタ」を食べた時のことを思い出します。
パスタ、ピザ、パン……。私は子どもの頃から、小麦系の食べ物が好きだったんですね。
師匠(九代林家正蔵)の下に弟子入りしてからは、おかみさんの手料理をいただきました。おかみさんはほんとにお料理が上手なんです。とりわけ特製のすいとんが出ると、うれしかったですね。絶妙な優しい味加減とモチモチとした食感で、今でも大好きです。修業中は、師匠のお宅でご家族と弟子たちと一緒に食事をするんです。弟子もたくさんいましたから、ほんとに大人数。私は一人っ子でしたので、皆でワイワイ食べる夕飯は楽しかったです。
忘れもしないのは、入門してすぐの頃。ギョーザを作るのをお手伝いしたんですけど、その量がすごくて。200個くらい包んだんですよ。量が多いので、素早くできる師匠のお宅流の包み方があるんですね。ひだを作らないで包む。それを教わって、おかみさんと姉弟子と私でひたすら包みました。着物の畳み方、包み方より早く、ギョーザの包み方を教わったという前座修業でした。
また、お正月には師匠のお宅にたくさんの人が来ます。そのためお雑煮を、皆さんに振る舞えるように大量に作るんです。お雑煮を食べたお客さんは、カツオのだしがおいしいと言ってくれます。実は立派なかつお節が届けられ、それを削り器で削るというのが、私たち弟子の仕事。よそではなかなかできない経験をさせていただきました。
修業が明けて実家に久しぶりに帰った時に両親に作ったのは、おかみさんに教わったギョーザです。それまでほとんど私の手料理を食べた経験がなかったので、両親はとても喜んでくれましたねえ。
私も、真打ちに昇進できました。新真打ちは、披露興行の時に出演者全員に打ち上げでお礼をする風習があります。これまで多くの先輩方が真打ち披露興行でお礼をする姿を見てきたので、ついに自分もこの日が来たのかという思いでしたね。上野の焼き肉店「太昌園」さんで、40人くらいの皆さんと打ち上げをいたしました。
真打ち披露興行では、打ち上げとは別に、楽屋に差し入れもしました。私は群馬県のものを皆さんに知っていただきたくて、焼きまんじゅうを出しましたし、群馬県人なら知らない人はいない「登利平」の鳥めし、「だるま弁当」「釜めし」も出しました。喜んでいただけたようで、うれしく思っています。
(聞き手・菊地武顕)