[論説]22年度青果卸決算 連携深めて機能強化を
日本農業新聞は01年度決算から全国の青果卸に事業報告書の開示を求めている。22年度決算は、全国中央市場青果卸売協会の加盟社と取扱高150億円以上の卸83社に依頼、回答のあった65社分をまとめた(回答率78%)。
22年度の特徴は、取扱高が前年度を上回る増収が65%(21年度は74%が減収)となったものの、本業のもうけを示す営業損益では、営業赤字を計上した卸は37%(同27%)に上ったことだ。取扱高が増加しても、利益増に結びつかないケースが目立った。
増収は、天候不順や燃油高に伴う加温抑制などで主要品目の入荷量が少なく、堅調相場となったため。営業赤字は「物流2024年問題」を控え、産地は大都市の卸に出荷の絞り込みを進めたことで、地方卸は手数料収入を見込める委託集荷ではなく、利益率の低い買い付け集荷を余儀なくされた。
営業赤字を計上した卸の事業報告書をみると、多くの卸で買い付け販売の割合が高まっている。赤字を計上した卸の多くは大都市の周辺や地方に位置し、取扱高上位の卸との間で集荷力で差が開いた。
ただ、大都市周辺や地方の卸は、地域に根差す中小の産地にとって重要な出荷先であり、地域の消費者の食生活を支えている。取引する農家やJA、仲卸、小売業者の課題に向き合い、地方卸ならではの視点で産地育成や庭先集荷、販路拡大など細やかなニーズに対応することが求められる。
一方、協会に加盟する22年度の上位10社の売上高の合計は、全体の46%と約半分を占めた。10年前は40%であり、大都市に立地する卸の寡占化が進んでいることがうかがえた。産地は、特定の卸に荷が集中するメリットとデメリットの両方を考えながら、取引を進める必要がある。
産地、卸にとって喫緊の課題は「2024年問題」をどう乗り切るかだ。産地、卸が単独で対応するのは難しい。北九州青果は農水省の事業を活用し、共同物流拠点を今秋にも完成させる。九州最北端の地の利を生かし、青果物の中継拠点として、多様な卸や産地との連携を模索する。
国産青果物の卸売市場経由率は8割で、流通の中核は卸が担っている。これまで以上に卸同士の再編統合やネットワークを強め、青果物の安定供給につなげる必要がある。