[論説]農業の物流合理化 伝票電子化、荷物集約を
トラック運転手の労働時間規制の強化で輸送力が不足する「物流24年問題」を踏まえ、大綱では、伝票など情報のデジタル化や構造改革を促すため、各分野の数値目標を設けている。農林水産物・食品分野については、流通合理化計画の認定件数を目標としているため、達成の「見通しが立った」に過ぎない。
農業を含む全業界で見ると、労働力の面では目標達成は道半ばだ。トラック積載率は25年度目標の50%に対し、21年度は38・5%と、一層のてこ入れが必要だ。
農業分野の合理化計画は、25年度目標の200件に対し、22年度末時点で164件。JA全農が取り組むパレット輸送や、各JAで導入が進む出荷情報の電子化システム「nimaru(ニマル)」を使った省力化、農産物を中継保管する共同物流拠点「ストックポイント」の整備など、既に多様な取り組みが始まっており、対策が急がれる。
生鮮農産物の輸送は、鮮度を保持するため時間的な制約がある。情報伝達の合理化と荷物の集約を、両輪で進める必要がある。電子化で情報伝達が迅速になれば、より大きなロットで荷物を集約でき、トラック、鉄道など最適な輸送便の選択につながる。
電子化についてはJA京都やましろが、「ニマル」システムで出荷情報をデータ化。手書き伝票がなくなり、農家はデータ1件当たりの入力時間を70%以上、JAでは70%以上削減できた。卸売会社への出荷連絡にかかる時間も1件当たり80%以上削減できたという。システムの普及に期待が持てる成果だ。
農産物は、閑散期や帰り便の積載率が低い。JA全農いわては、夏に比べて荷が減る冬場の青果物輸送について、県内の拠点に集約して首都圏に輸送する実証を進める。トラック積載率が5割以上に増える効果はあったが、運賃は上がった。集約する地域を拡大するなど、採算がとれる仕組みづくりが急務となる。
荷主と運送業者間の適正な取引へ、国土交通省は「トラックGメン」を設置した。荷主は、契約上曖昧だった荷降ろし作業などの対価が求められ、運賃上昇は避けられない。産地も荷主としての対応が求められる。
物流のコストを誰が負担するのか。数値で明示することが適正価格への一歩となる。