[論説]始まる「国消国産」月間 適正価格へ国民理解を
「国消国産」は、「国民が必要とし消費する食料は、できるだけその国で生産する」という考え方。JAグループは「世界食料デー」に当たる10月16日を「国消国産の日」と定め、昨年からは10月を「国消国産月間」とし、全国で統一的な運動を展開する。
本年度は期間を11月まで2カ月間に拡大した。JAグループサポーターの林修さんやアイドルグループ・乃木坂46も後押しし、国民への浸透を目指す。1日には東京都世田谷区でキックオフイベントを開き、多くの都市住民に国産を選ぶよう呼び掛ける。
生産者と消費者が交流を深める拠点となるのが農産物直売所だ。2日は「直売所の日」。直売所を地産地消の拠点とすることを掲げた「JAファーマーズマーケット憲章」の制定から、今年で20年の節目を迎える。生産者と消費者、都市と農村をつなぐ場として価値は高まる。
今回の「国消国産」月間の目玉となるのが、全国約1500カ所の直売所で展開するキャンペーンだ。直売所を3回訪れた人は、47都道府県のJAグループが厳選した各地の農畜産物をもらえるチャンスがある。こうした取り組みを通じ、直売所を「国消国産」の拠点に育てよう。
「国消国産」運動が広がることで、食料自給率や食料安全保障への理解醸成につなげたい。2022年度のカロリーベースの自給率は38%と前年からほぼ横ばいなのに対し、生産額ベースでは5ポイント減の58%となった。ウクライナ危機の長期化と円安で、輸入農産物・食品の価格は値上がりする一方、肥料や飼料など生産資材価格の高騰が、国産農産物の価格に適正に転嫁されていないためだ。食品価格の高騰は、輸入依存度の高さの裏返しでもある。
農業も資材の国産化を進めると共に、生産費に見合う適正な農産物価格の実現が欠かせない。環境に負荷をかけて農産物を世界から買い集めるのは、時代にそぐわない。「国消国産」こそ国民の命を守る運動であると訴えたい。
国産農畜産物の大切さや、食料安保への関心は高まりつつあるが、多くの消費者が国産を意識して選び、適正な価格形成を理解できる環境になったとはまだ言えない。価格形成を巡り、新たな法制度の具体化も道半ばだ。この2カ月間で、国民の理解を得る大きなうねりを起こそう。