[論説]多様な担い手育成 産地の工夫で就農に道
愛媛県南予地方を管内にもつJAえひめ南は、宇和島市や県などと連携して来年4月、「JAえひめ南みかん学校」を開校する。毎年5人程度の研修生を募集し、JAの研修農場や協力農家での実習や座学を通して、栽培技術のノウハウや新しい品種や技術を1、2年で習得し、就農を目指す仕組みだ。
コロナ禍をきっかけに、地方移住を希望する若者が出てきたことに着目。同JAでは多様な担い手を継続的に育成しようと、2021年度から検討を開始。施設は使わなくなったJAのガソリンスタンドを改修し、設置した。
全国有数のミカン産地、同県JAにしうわも15年、休校になった管内の小学校をミカンの収穫作業を手伝うアルバイト用の宿泊施設に改修した。加えて今年1月には、伊方町の使われていない保育所を、アルバイト用の宿舎に改修した。この事業は、八幡浜市真穴地区で1994年に始まった。以降、収穫を支える「アルバイター」は、貴重な産地の戦力に育った。地域に眠る施設に手を加え、農村と都会の人をつなぐ産地発の試みを各地に広げたい。
ミカン園で働いた経験がきっかけとなり、就農する人も増えている。同JAは16年、「担い手支援チーム」を発足、Iターン就農希望者の研修も受け入れる。就農を希望する30人のうち、半数の15人はアルバイターの経験者だ。「既に作業内容を理解しているので、ミスが少ない」と同JAは評価する。
担い手不足の産地を支えるには、都会の若者や女性、障害を持った人、外国人など多様な人材の受け入れが欠かせない。労災保険の加入など労働安全を意識するのはもちろん、快適に暮らせる居住空間があれば、毎年、安心して働くことができる。それが就農の糸口にもなるだろう。
JAにしうわは、北海道のJAこしみずと17年に姉妹JAとして協定を締結した。繁忙期が違うことを生かし、「農作業支援員」が互いの産地に出向いている。JAこしみずでは1~10月にかけてテンサイの移植や補植、ジャガイモの選果作業などを行い、11、12月にはJAにしうわでミカンの収穫作業をする。年間通して旅するように働ける。
労働力の確保には、さまざまな方法がある。工夫次第で就農につながる。関係機関が一体となって知恵を絞ろう。