[論説]西日本の少雨 影響最小限に抑えよう
真冬並みの強い寒気が流れ込んだ影響で、北海道から九州の日本海側で大雪が続き、全国的に厳しい寒さとなった。一方、雨が少ないのは愛媛県。松山市の9~11月の3カ月間降雨量は計62ミリと平年の19%にとどまる。特に9、10月は1カ月で7・5ミリしか降らず、1890年の調査開始以来、最少を記録した。ここまで少ないのは異常だ。愛媛に加え和歌山、静岡、熊本、長崎各県の降水量も、複数の地点で平年を下回った。
少雨の影響でミカンは味が凝縮され、糖度は高くなり、市場からは高い評価を受けている。今年は表年であるにもかかわらず価格は好値で推移する。だが、全般に小玉傾向で表年の割に収量は減っている。これからシーズンを迎える中晩かんも同様だ。
産地が気をもむのは、来年産への影響だ。夏の気温が高く雨が少なかったことで、木に過剰なストレスがかかったためだ。来年は収量が少ない裏年に当たるが、愛媛県では「樹勢が低下し、“超裏年”になる恐れもある」(農産園芸課)と注意を呼びかける。産地の適切な管理が一層求められている。
高齢化が進む中で、農家は例年以上の負担を強いられている。乾燥でミカンの葉が巻いた状態が目立ち、樹勢も低下。収穫作業と同時に、かん水や液肥散布をした。秋のかん水は異例のことという。
かんきつだけではない。広島県の特産ジャガイモ「●馬鈴薯(まるあかばれいしょ)」は、高温と少雨が重なって収量が落ち込んだ。高単価の2L、Lが少なく、S、Mと小玉が目立ち、農家の所得減につながる。JAひろしまは、かん水や病害虫対策の徹底を促すことで、秀品の確保に力を入れている。
愛媛県大洲市では、ハクサイの生育が遅れている。チューブかん水の回数を増やすなどして、出荷基準を満たすサイズにするのに苦労した農家は多い。市内に水を供給する鹿野川ダムの貯水率が0%になるなど、幅広い農畜産物に水不足の影響が及んでいる。
地球温暖化が進む中、ドカ雪や異常高温、渇水などの極端な気象現象は今後一層、深刻化する恐れがある。JAや行政などの関係機関は、的確な指導で影響が最小限になるよう迅速な対策を講じる必要がある。産地は少雨の教訓を今後に生かすため、課題を洗い出し、対策につなげよう。
編注=●は〇に赤