[論説]能登半島地震 復旧へ協同の力生かせ
石川県内では、輪島朝市周辺では大規模火災で約200棟以上が焼けた。建物倒壊も目立ち、取り残された人がいるとの情報もある。早急の対応が必要だ。泉谷満寿裕珠洲市長は2日、家屋が倒壊し、道路も寸断され「市内は壊滅的な状況」と訴えた。一刻も早い救出と復旧へ、国を挙げた支援が必要だ。市内の農家からは、集落につながる道路が陥没したり隆起したりして寸断され、避難所にも行けないという声も上がる。
高齢化が進む農山村では人手が足りず、復旧にも時間がかかる。生存が危うくなる72時間が近づく。国や自治体は一刻も早く、命を救うことに全力を上げてほしい。JAによる炊き出しや声かけなど、助け合いの心で支えよう。
災害から命を守るための講演を国内外で続ける宮城県気仙沼市の農家、佐藤誠悦さんは、東日本大震災の教訓を踏まえ「まずは自助。自分の命を守ってほしい。自分が助かったら、周囲の人を助け(共助)、安全な場所に避難してほしい」と呼びかける。停電により、寒さが続いて低体温にならないよう新聞紙で体を包んだり、首を温めたりと、とにかく暖を取ってほしいと助言する。
避難所や車中泊が続けば、同じ姿勢を長く続けることで足の血管が詰まる「エコノミー症候群」の危険も高まる。離れていても電話やLINEで声を掛け合って孤立を防ぎ、命を守ろう。
災害からの回復力(レジリエンス)が問われている。地震や津波などの災害が多発し、異常気象も常態化する中で、まず優先すべきは命を支える水と食、エネルギーのライフライン確保だ。経済を優先するあまり、この「原点」を見失ってはならない。
東日本大震災では被災直後に雪が降り、マイナス6度の中で不安な夜を明かし、多くの被災者が低体温症で亡くなった。佐藤さんは「互いに励まし合い、不安な夜を生き抜いてほしい。互いに寄り添って体温を上げる手段をとりながら、辛い時は、静かに命の歌を歌い、一夜を過ごした児童もいる」と励まし、生き抜くよう呼びかける。
4日にかけて能登半島の被災地にも冷たい雨が降り、土砂崩れのリスクも高まる。気象庁は、発生から1週間ほどは震度7程度の地震が起こる恐れもあるという。共助の心で復旧へ力を合わせよう。