[論説]除雪中の事故 安全徹底し命を守ろう
雪による死者数は、今冬は能登地震の対応で総務省消防庁の統計は出ていない。2020~23年の3シーズンの死者数は計168人に上る。月別で多いのが1月の70人。次いで2月は56人と1、2月の死者が7割以上を占める。都道府県別では北海道が3割となり、次いで新潟、青森、山形県の順。死因の8割を占めるのが、屋根の雪下ろしや除雪作業中の死亡事故だ。
65歳以上が8割以上で、高齢者の雪下ろし、除雪機を使った作業をどう安全にするかが、事故を防ぐ鍵となる。
安全な除雪作業を広めようと「越後雪かき道場」を主宰する、長岡技術科学大学の上村靖司教授によると、転落した場合に備えて、複数人で作業することや、命綱の着用が不可欠だという。命綱を固定する金属アンカーを屋根に設置した上で①ヘルメットをかぶる②携帯電話を持つ③墜落防止のハーネス(安全帯)を付ける──よう呼びかける。
能登半島地震でも、雪の重みで家屋がさらに損壊する危険性がある。04年10月に新潟県の山間部を中心に発生した中越地震では、最大震度7で死者は68人に上った。上村教授によると、地震に加え大雪に見舞われたことで、新潟県内では269棟が倒壊した。
能登半島の被災地では、地面の地割れや隆起、地盤沈下が多く確認された。そこに雪が降り積もれば、被害の箇所が分からなくなり、車のタイヤが挟まるなどの二次被害を招く要因となる。それだけに「除雪を優先すれば、復旧の歩みが遅くなる。『雪が降ったら家屋から出ない』といった割り切りも必要」(上村教授)と指摘する。
除雪は高齢者にとって肉体的負担が大きく、健康を害するリスクも伴う。屋根の雪下ろしは心身を緊張させ、脳や心臓にも負担をかける。被災地では、住み慣れた自宅を離れ、不慣れな環境で生活している人が多い。心身の負担は大きく、無理な作業は禁物だ。
今後、注意したいのが気温の急上昇だ。気象庁は31日~2月8日にかけて南からの暖かい空気で覆われ、北海道を除き、東北以西で平年と比べ気温がかなり高くなると予報する。北陸や東海、関東甲信などでは雪崩の危険性もある。農作物の管理にも気を付けたい。
気象情報を参考に、安全な除雪作業を徹底しよう。