30年ほど前、私はオーストラリアのクイーンズランド州トゥウンバという町に住んでいました。その頃、来る日も来る日も雲一つない快晴が続いていて、全く雨が降りませんでした。大地は赤茶けて、道路際の雑草も生えず、町は住民に節水を呼び掛けていました。そんな時、久しぶりにまとまった雨が降った翌日の、地方紙一面トップの見出しが「Good Rain!」だったのです。まさに皆が待ちに待った雨でした。この町に住み始めたばかりの私にも、その新聞の見出しの意味がよくわかりました。

図はオーストラリア気象局が2023年5月1日から2024年4月30日までの1年間の降水量を色で表したものです。北部熱帯地域と東部沿岸地域を除いて900ミリメートル以上の青の表示はなく、国土の半分ほどが年間降水量300ミリメートル以下です。
オーストラリアの肉牛生産は穀物肥育もありますが、それも含めて牧草肥育がベースとなっています。雨が降らないと牧草が育たないので、牛は食べるものがなくなり、一部穀物肥育に向けられる以外は一斉にと畜場に出荷され生体価格は下落します。逆に雨が降ると牧草が育ち、牛はたくさん食べることができ、と畜場への出荷が滞るので生体価格は上昇します。生体価格の変動がとても大きいのが特徴です。
一般にオーストラリアではエルニーニョになると干ばつになり、ラニーニャになると洪水になる傾向があります。肉牛農家は四半期ごとに発表される気象局の長期予報、とりわけENSO(エルニーニョ・南方振動)を注視しています。
公益社団法人全国食肉学校
専務理事学校長
小原和仁