[論説]JAの移動店舗車 運用工夫し暮らし守れ
JA全中の「JAグループの活動報告書」によると、買い物を支援する移動購買車は、2023年度は全国103JAが導入し、利用者は年間延べ114万人に上る。
移動金融店舗車は、地域貢献や、災害などの緊急時でも事業を継続できるようにする目的で、16年度から農林中央金庫が購入費用を一部助成し普及を進める。今年3月末時点で138台が導入された。
いずれも支店の統廃合などでJAの店舗が閉鎖された地域を巡回し、金融サービスや食品販売などを行い、住民の暮らしを支えている。1月に発生した能登半島地震では、石川県のJAのとに、長野県のJA上伊那が移動金融店舗車を派遣するなど、協同の力を発揮した。
課題は採算の厳しさだ。移動購買車は、人口の少ない中山間地を巡回することが多く、単独で収益を上げるのは難しい。移動金融店舗車はJA以外の金融機関でも運行しているが、ネットバンクの普及や人手不足で運行を縮小する事例もある。
農山村に暮らす高齢者の暮らしを支えるためには、移動購買車、金融店舗車の維持は欠かせない。参考にしたいのが、各地の工夫だ。例えば栃木県のJAなすのは移動金融店舗車が購買店舗も兼ねており、金融手続きのついでに買い物もできるようにして利用者の利便性を高めている。
農林中金によると、138台の移動金融店舗車の約1割が購買店舗兼用になっているという。JAひろしま呉地域では、移動購買車と移動金融店舗車の両方を所有し、同じ地域を巡回することで、住民の利便性を確保している。
中山間地を中心に金融店舗や小売店舗の撤退が続く中で、どう組合員や利用者の生活を守っていくのか。JAグループが6月に決定した第30回JA全国大会の組織協議案では、「協同活動と総合事業で食と農を支え、豊かなくらしと活力ある地域社会を実現する」をJAの存在意義として掲げた。さらに、五つの取組戦略の一つ「くらし・地域活性化戦略」として、総合事業による組合員の豊かなくらしの実現、生活インフラ機能を含めた各種事業・活動を通じて、地域社会の活性化に貢献することを掲げた。
具現化は待ったなしだ。各JAの事例を参考に、移動店舗車を積極的に活用していくことが重要だ。