[論説]農山村の将来像 人口減受け入れて前へ
厚生労働省は6月、1人の女性が産む子どもの数の指標となる合計特殊出生率が2023年は1・20となり、1947年の統計開始以来、過去最低となったと発表した。人口を維持するには2・07がおおむね必要な水準とされ、同省は「危機的」とみる。
打開策はあるのか。7月上旬、NPO法人中山間地域フォーラムが開いたシンポジウム「人口減少下の農村ビジョンを考える」の中にヒントがあった。
農村と都市が関わり合う「関係人口」を提唱した「雨風太陽」の高橋博之代表は、「人が減るのがなぜ悪いのか、問い直さなければならない」と指摘。山形県小国町役場の横山真由美氏は、移住者と住民との交流、高校の魅力化などを紹介した。多様な取り組みが相乗効果を生んでいるとし、「住民が減っても町はとてもにぎやか。新たな人材が広がり、これからますます楽しみ」と展望を描いた。
日本全体の人口が減る中で、人口維持や増加にこだわるのではなく、まずは受け入れて地域の将来像を模索しよう――。高橋さんらが投げかけるメッセージに耳を傾けたい。
人口減少に目を背け、楽観視しようという意味ではない。人口が再び増えて、経済が成長し続けるという社会は幻想に過ぎない。人口減少を直視した上で、どう持続可能な地域づくりを展開するのか。政府、自治体、JA、住民それぞれができる対策を模索することが重要だ。
とりわけ農村現場では、住民らが地方自治体やJAなどの関係組織と連携し、将来ビジョンを議論していくことが求められる。
高齢化が進み、集落機能の維持が危ぶまれている地域は多い。人口に縛られず、空き家や水路、祭りなどを維持する仕組みをどう再構築するか、地域で話し合う転換期にある。
実際、人口が減っても活気のある地域は全国に存在する。地域外に暮らす子どもや孫を含む「関係人口」と一緒に地域の祭りを再開したり、他集落と連携したり、デジタルの力を活用したりと地域は工夫を重ねている。
人口減少を恐れず、受け入れた上で年齢や性別などを超えて多様な住民らが話し合う。農山村の将来に向けて住民が模索することこそ、持続可能な地域づくりの一歩となる。