[論説]食料安保は平和への道 終戦の日
市民を巻き込んだロシアのウクライナ侵攻や、イスラエルとパレスチナ・ガザ地区で続く紛争は、国際人道法に反し、世界の平和と安定を揺るがすものだ。力による現状変更は、未来を担う子どもたちの命を奪い、厳しい現実を突きつけている。
欧州での極右の台頭、米国内の対立と分断、中国の覇権主義は、国際協調と多数の国家で取り組む「多国間主義」を揺るがしている。
国際社会の安定には、国連の役割が欠かせないが、米国やロシア、中国など安全保障理事会常任理事国の拒否権行使で、事実上の機能不全に陥っている。憂慮すべき事態だ。日本政府は国連改革に積極的に取り組み、紛争解決機能を確保する必要がある。
命を支える食料を巡る問題も、紛争の引き金となる。世界の人口は80億人を超え、まもなく100億人に達する見通しだ。国連によると、2023年に飢餓に直面した人は、最大7億5700万人に達した。地球温暖化に伴って海面水温が上昇し、世界中で異常気象が頻発すれば、世界中で食料を巡る争奪戦が一層、激しくなるのは必至だ。
こうした不安定な情勢の中で、平和憲法を掲げる日本の果たすべき役割は大きい。政府は、あらゆる外交チャンネルを駆使して、和平への働きかけを続けるべきだ。平和こそ経済発展の土台である。
紛争を続ける各国に対し、国際法順守を訴え、解決への対話と協力を要請していこう。米国の「核の傘」に頼り過ぎ、東アジアの緊張を高めるべきではない。政府には慎重な対応を期待したい。
次に、持続可能な開発目標(SDGs)実現に向け、温暖化の防止と、食料安全保障分野での強いリーダーシップを発揮すべきだ。改正食料・農業・農村基本法は、効率的な農業経営体だけでなく「多様な担い手」による生産基盤の強化や、環境に負荷をかけない農業の重要性を掲げた。
そうした考え方を世界にも広げたい。国内の自給基盤を強くし、輸入に依存する「国際分業論」の姿勢を改め、飢餓人口と環境破壊のリスクを減らすことに注力すべきだ。
敗戦の廃虚から立ち上がり、過ちを繰り返さない国を築いてきたのは国民の力だ。誇りであり、世界の手本でもある。唯一の戦争被爆国としての教訓を忘れず、世界平和に貢献する時だ。