また、伝統的な養豚農家や超近代的な食肉処理場を見学させてもらい、日本への豚肉輸出に懸ける、デンマークの並々ならぬ意気込みを感じたものです。食肉学校の学生食堂で出される食事は絶品で、様々な種類のハムやソーセージ、チーズやヨーグルトなどの乳製品の味は実に美味でした。
研修の間の週末は休養日だったので、私はもう一つのソーセージの本場で、前週に東西統一したばかりのドイツに行くことにしました。1990年10月12日金曜日の授業終了後、コペンハーゲン中央駅から一人夜行寝台列車に乗りました。列車が旧東ドイツに入った時、銃を構えた兵士に検問されたのには少しビビりましたが、翌朝無事にベルリン中央駅に降り立つことができました。

そこで驚いたのは延々と続くベルリンの壁です。たくさんの人々が思い思いに壁をハンマーで壊し、そのかけらを拾っていました。ドイツ統一の喜びをかみ締め、正に歴史の証拠品として大事に持ち帰っているのだと思いました。ハンマーを持ち合わせていない私も、誰かが崩した壁のかけらを拾い、お土産として持ち帰りました。
それを受け取った友人の中には「これって本物?」と聞く人もいましたが、どこもかしこも壁だらけなのに、わざわざコンクリートを固めて偽物を作る人がいないことは、現地を目の当たりにした私が一番よく知っています。
公益社団法人全国食肉学校
専務理事学校長
小原和仁