[論説]多発する規格外農産物 廃棄減らし利用法探れ
農畜産業振興機構によると2022年の野菜の収穫量は約1284万トン。出荷量は約1114万トンで、その差の170万トンが産地段階で廃棄されている。全収穫量の11・4%を占め、本来なら収入を得られたはずの農産物が多く含まれている。異常気象で商流に乗らない規格外が増えれば、農家の収入減に直結する。
極端気象で近年は、夏の酷暑が続く。気象庁によると今年7、8月は西日本を中心に太平洋高気圧に覆われて平均気温が全国的に上昇。1946年の統計開始以降、西日本と沖縄・奄美で1位、東日本で1位タイを記録した。熱中症の死者も相次ぎ、気象災害といえる。産地は耐暑性品種や技術を導入し対応するが、規格外は発生する。色や形などにとらわれず、規格の在り方を見直す必要がある。
参考にしたいのが、西日本を中心に16の生協で構成するグリーンコープ共同体(福岡市)の取り組みだ。猛暑の影響で増えた規格外品を正規品と同じ価格で仕入れ、販売を始めた。正規品の出荷が減り、収入が減ってしまう契約農家を支援する。赤く変色したピーマンや、食べ頃を迎えても赤くならず緑色のリンゴなどが対象だ。同コープ共同体への出荷量は、ミニトマトが前年比35・3%、キャベツは同31%、ダイコンは同26・5%とそれぞれ減った。温暖化が進行し、産地の損失は大きくなっている。暑さで規格外が発生してしまう実態を周知し、消費者の理解を促す取り組みを各地に広げたい。
技術開発にも期待したい。埼玉県富士見市のベンチャー企業「ASTRA FOOD PLAN(アストラフードプラン)」は、規格外農作物などをパウダーに加工する装置「過熱蒸煎機」を開発した。この装置で作った食品パウダーは「ぐるりこ」の名称で商品登録し、ホテルのレストランなどで使われている。また、子どもがなめても安心なクレヨンの原料として活用されるなど、規格外農産物を廃棄することなく、多用途に利用している。
大量生産、大量消費、大量廃棄を見直す時だ。効率的な流通を意識し、規格の厳格化が慣習とされてきたが、温暖化が進む中で、正品率の低下は進む一方だ。収入が減れば農家は減り、食料安保の危機となる。気候変動の時代、見た目より中身重視の農産物流通に変えていく必要がある。