[論説]訪日客急増の春節 感染症侵入 水際で防げ
春節に伴う連休は、中国と韓国では28日から始まる。さらに2月上旬にかけてベトナムやインドネシア、シンガポール、台湾なども春節休みとなり、人や物の移動が一層、激しくなる。
中国は、春節をはさんだ前後40日間を「春運」(春節に伴う大移動)とし、今年は1月14日から2月22日までに延べ90億人の移動が予想されている。東京都内の観光業者が、中国在住の人に春節期間の海外旅行について調査したところ、旅行先の1位は日本で、全体の7割が3泊以上を予定していると答えた。対象は中国の都市部(10市)に暮らす住民で、10代から60代まで幅広い層が日本を訪れる予定だ。
大移動に伴い、懸念されるのが人を介した感染症の広がりだ。中国は年明けに風邪の症状に似た「ヒトメタニューモウイルス」の流行が報じられた。過度に不安視することはないとされるが、高齢者や乳幼児が感染すると重症化する恐れも指摘されている。
国内ではインフルエンザが流行のピークを超えたとみられるが、警報が出ている自治体は多く、感染症を防ぐため手洗いやうがい、十分な休息などを心がけたい。
旅行会社が公表した国内旅行の予約情報を基にしたランキングでは、トップ10に岐阜や山梨、宮城各県が入り、京都や北海道といった定番の観光地以外も注目が高まっている。東北地方もスキー客の予約が相次いでいるという。
人気の地域が拡大している背景には、台湾や韓国と東北の空港を結ぶ直行便が増加していることがある。農村にインバウンドが多く訪れ、土産品や飲食需要が拡大すれば、地方の活性化につながる。
一方、家畜を中心とする農場の防疫については、一層の警戒を強めなければならない時期だ。水際での検疫について農水省は春節に合わせ、空港での注意喚起を強めている。警戒が必要なのは、日本では未発生だが、アジア各地で猛威を振るうアフリカ豚熱だ。ウイルスが肉類に付着したり、靴底の土に付着したりする恐れがあり、有効なワクチンや治療法がないだけに対策を徹底したい。果樹に大きな被害を与える火傷病、ミカンコミバエ種群などの侵入も防がなければならない。
農場でも外国語で注意を喚起する看板を設置するなど防疫態勢を強化し、地域の農畜産業を守ろう。