[論説]協同組合基本法の制定 理念と役割の明確化を
日本には、JA、生協、森林組合、漁協、信用組合などの協同組合があり、延べ1億820万人超(2021年)が組合員となっている。その分野は、農林水産業・購買・金融・共済・就労創出・福祉・医療など多岐にわたり、事業収益は26兆7000億円(同)に上る。近年では、22年に労働者協同組合法が施行し、113団体(24年11月)が仕事おこしを通じ、地域の困りごとの解決に取り組む。
これらの多様な事業を担保するため産業政策別の個別法はあるが、横断的につなぐ基本法はなく、監督官庁も縦割りである。協同組合基本法が整備されていないのは、主要な先進国で日本だけだ。韓国は11年に同法を制定し、施行以来、2万5000を超える新たな協同組合が誕生した。
国内では、日本協同組合連携機構(JCA)が設置した「協同組合法制度研究会」が昨年3月に提言をまとめた。提言は、内外の社会状況の変化に対応し、協同組合の存在価値と社会的役割をまず理念法の形で基本法に盛り込み、今後の発展を促すよう求めた。だが、各論や立法化の道筋など詰めるべき課題は多い。
同研究会座長の滋賀県立大学の増田佳昭名誉教授は、持続可能な地域社会づくりに向け、「協同組合の役割を確認し、協同組合運動の発展を支援するために法体系整備のあり方について、検討と方向づけが必要」と指摘する。
立法化によって何が変わるのか。協同組合が暮らしや地域の課題解決に貢献していることを明文化することで、社会的認知度の向上が期待できる。次に役割と理念が明確になれば、農協法や生協法など個別法が抱える課題への対応がしやすくなる。例えば、実態に即した員外利用制限の見直しなどの法的根拠となり得る。新たな協同組合の設立根拠にもなるだろう。
法制化の議論はまだ緒についたばかりだ。先日の「協同組合法制度に関するシンポジウム」でも、国民的な理解の重要性が共有された。自治体サービスが低下し、民間企業も効率優先で地方から撤退する中で、誰が暮らしやなりわい、コミュニティーを支えるのか。助け合いによる協同の力を広く住民に実感してもらうことがなにより大切だ。
国際協同組合年を追い風に、協同組合セクターも主体的に自らの価値と存在を発信し、地域に貢献していこう。