[論説]JAへようこそ 失敗して大きくなろう
たくさん失敗しよう。大相撲春場所で解説を務めていた琴風さんが、こんなことを言っていた。「強い人はたくさん負けてますよ。たくさん負けて、相撲を覚えていくんですよ」。負けて覚える相撲かな。そう、失敗して覚える仕事かな。それが新人の特権。
でも、周囲の期待に応えようと頑張って失敗したら、へこむよね。米大リーグ、カブスの今永昇太投手は、異国の新天地で闘うために、こんなメンタル術を身に付けたという。「完璧じゃなくてもいい。他人が求める自分を描く必要もない。自身でハードルを上げすぎないように」とスポーツ紙に語っている。
理想は高く、現実は一歩ずつ。今の自分にできることを誠心誠意やる。小さなことの積み重ねが、きっとあなたを成長の高みへと導いていく。
重圧でつぶれそうになったら、弱音を吐こう。先輩や仲間を頼ろう。上司は、そのサインを察知し、サポートしてほしい。「職場での孤立」が離職の引き金になるのを防ぐために。
少し余裕ができたら、自分の目標となるような先輩の仕事ぶりを観察して、吸収しよう。日本農業新聞の企画「私の渉外ノウハウ」が参考になる。入組9年目の営農指導員は、「その業務を“自分事”として捉えられるかどうかがポイントだ」という。与えられた仕事をただこなすのでなく、自分の果たすべき役割を常に考え、追求することが成長につながる、と若い世代にアドバイスする。
新人のうちは「知識もなく人と話すのがおっくう」と思うだろう。入組6年目のライフアドバイザーは、新任渉外担当者に向け「7割聞き役に徹すること」を勧める。組合員や利用者との距離を縮めるための聞く力。「不安に思っていることをどれだけ聞き出せるかが重要」だと話す。
管理職や経営者にもお願いしたい。訓示の枕言葉に「厳しい」と言いがちだが、「課題を一緒に解決していこう」と呼びかけよう。JAがどんな貢献ができるかを具体的に語ってほしい。その熱量が改革の原動力だ。JAは「人」の結合体。教育に始まり教育に終わる。選ばれる職場となるため、人への投資を経営の基盤に据えるべきだ。
さあ、新人の皆さん、一緒に一歩踏み出そう。前例が通用しないから面白い。挑戦する者に扉は開かれる。