[論説]パレスチナの戦火 和平へ思い連帯しよう
3月下旬、日本のNPOなどが作った実行委員会は、東京都内で「ガザの恒久的停戦とパレスチナの和平を求める」をテーマにした緊急会見を開いた。報告によると2024年の1年間で、ヨルダン川西岸地区では子ども102人を含む555人が犠牲になった。オリーブの木が根こそぎ収奪され、羊の盗難も日常化。物価高騰で食糧難が深刻化し、122万人が飢餓状態にあるという。想像を絶する数字だ。実行委員会の日本人女性らは、被害の数字だけでなく、現地の農家や子どもたちの声、農業被害を報告した。
ガザ南部で畜産支援を続けるNPO法人「パルシック」の糸井志帆さん(47)は、「酪農家の女性たちは避難先でもチーズを諦めずに作り続けている。子どもたちに食べさせたいと深刻な状況でもなりわいを守ろうとしている」と報告。自宅を破壊された農家のメッセージも紹介、水が枯渇し、9歳の子どもと水を求めて歩き続け、羊には水を与えられなかった悲しみを訴えた。こうした現地の情報を日本で知ることができるのは、戦禍の中で支援を続けるNPOなどの存在があるからだ。
ロシアによるウクライナ侵攻を含めて、世界各地で起きている紛争に無関心でいてはならない。ガザで犠牲者が増え続ける状況、現地の農家の思いを、まずは知ろうとすることが重要となる。
パレスチナ農業開発センターの代表・フアッド・アブサイフさん(50)は、オリーブの交易をする「オルター・トレード・ジャパン」を通じ、日本農業新聞読者に手紙を寄せた。「オリーブの木は単なる作物ではなく、記憶でありアイデンティティ(存在証明)です」と。その木が、根こそぎ破壊される苦しみをつづった。その上で「同情ではなく連帯を求めています。私たちの声をあなた方の心に、畑に、協同組合に響かせてください」と呼びかけた。
できる支援は限られている。それでもNPOによると惨禍の農家らの声をSNSで発信したり、家族や仲間と共有したりするだけで、力になるという。パレスチナ産のオリーブや加工品の購入も支援になるはずだ。今世界で起きている問題から目をそらさず、何ができるのかを考えることが和平への一歩になる。
日本は戦後80年を迎える。唯一の戦争被爆国として守り抜いた平和を、世界に広げなければならない。