[論説]宮崎のイノシシ豚熱 農場侵入を食い止めよ
都城市は豚の産出額が、327億円(2023年)と全国1位。宮崎県は豚の飼養頭数が約72万頭(24年2月)と全国3位の有数の産地で、豚熱の感染が確認されたイノシシが発見された場所から半径10キロ圏内には養豚農家が97戸あり、計17万4000頭を飼っている。養豚場での感染は何としても食い止めたい。
九州では23年9月から、佐賀県内の養豚場での豚熱発生を受けて、飼養豚にワクチンを接種している。宮崎県でも既に70万頭が接種を済ませているが、ワクチンは決して万能ではない。今年に入り関東では、群馬県や千葉県の養豚場で豚熱発生の報告が相次ぎ、初発の18年から累計で98事例に上っている。豚熱のウイルスを農場に持ち込まない、持ち込ませないことが最重要となる。
農水省によると、ウイルスに感染した野生のイノシシは4月までの半年間で、36都府県、572頭が見つかっている。ウイルスは車両のタイヤや靴底などに付着し、あらゆるところに広がっている。
宮崎県はイノシシ向けの経口ワクチンの散布を含め、農場への侵入を防ごうと対策を急いでいる。経口ワクチンは19年に山林などで設置を始めて以来、現在は40都府県まで増えた。餌の形をしたワクチンの設置は少なくとも240万個以上。野生動物の防疫対策は難しいが、拡大を食い止める効果はあったのか、設置から5年以上が過ぎ、効果を検証すべきだ。
今年は、5月の大型連休の期間が最大4連休と比較的短いため、大手旅行会社によると国内の近場で過ごす人が増えるという。登山やハイキング、キャンプの他、山菜取りで山林に入る機会が増える季節でもあり、普段とは違う人の流れにも注意が必要となる。
10年に宮崎県内で猛威を振るった口蹄疫は4月20日に初発を確認し、5月の連休明けに急増した経緯がある。豚熱とはウイルスの性質も対処方法も大きく異なる疾病だが、拡散を防ぐ対策は変わらない。
同省は、①靴に付いた泥は登山口などで落とす②イノシシを寄せ付けないよう食べ残しは持ち帰る③家畜がいる施設に近寄らない④イノシシの死骸を見つけたら管轄の自治体に連絡する――よう求める。対策を徹底し、官民挙げて養豚場へのウイルス侵入を食い止めよう。