[論説]食品ロスの削減 捨てずに生かす工夫を
国内の食品ロス(22年度推計)は472万トンで、国連世界食糧計画(WFP)の食料支援量(23年)の約1・3倍に上る。1人当たりの食品ロス量は年間38キロで、毎日おにぎり1個分の食べ物を捨てていることになる。
政府は30年度までに、2000年度のホテルや飲食店など事業系の食品ロス547万トン、家庭の食品ロス433万トンをともに半減させる目標を掲げる。事業系は既に22年度に達成し、新たに6割削減へと目標を修正した。一方、家庭ではあと約20万トンのロス削減が必要となる。
注目したいのは、消費者庁が3月末に賞味・消費期限の基準を見直し、食品を扱う事業者に対して各期限の延長を求めたことだ。賞味期限とは「おいしく食べられる期間」を指し、期限を過ぎてもすぐに食べられなくなるわけではない。一方、消費期限は「安全に食べられる期限」を指す。事業者は微生物試験などを踏まえ、品質を保証できる日数を算定するが、20年前に設定された基準であり、当時と比べて食品の保存技術が向上したことから、期限の延長を求めた。ロス削減につながることを期待したい。
これまで事業者の取り組みは、食品ロスが多発する恵方巻きやクリスマスケーキなどの予約販売の拡大、期限間近の値引き販売などが中心だった。だが、できることはまだある。食品の流通過程で製造者、販売者、消費者の3者が製造日から賞味期限までの期間を3分の1ずつ分け合う「3分の1ルール」という商習慣があるが、もっと緩和すべきではないか。併せて野菜や果実の規格簡素化や、賞味期限が近い食品の活用を促進し、フードバンクや子ども食堂などを支援したい。
賞味期限、消費期限の違いを理解した上で、ロスを出さない買い方や調理も重要だ。店頭では、製造日の古い物から商品を選ぶ「てまえどり」や、外食時の食べ残しを防ぐため、食品を入れる持ち帰りバッグの普及も重要だ。
水分の多い食材を捨てれば、焼却処理のために年間2兆円を超える税金がかかる。焼却に伴う二酸化炭素(CO2)が増え、地球温暖化に直結する。燃やさずコンポストにすれば土づくりにつながり、地域内循環が生まれる。
市民の力で温暖化を防ぎ、官民挙げて、食品ロス削減の機運を高めよう。