[論説]基本法に「環境調和」 推進へ強力な支援必要
農業と環境の調和は、いまや世界の潮流だ。温暖化防止に向けた農業分野での貢献であり、異常気象が農業生産に及ぼす影響を抑えるためにも、重要な取り組みとなる。
改正基本法は、農薬や肥料の適正使用、堆肥の有効利用などを促している。みどりの食料システム戦略の位置付けを高めた格好だが、基本法には他の重要課題も並ぶ。環境調和を単独で推進するのではなく、総合戦略の中で展開していく必要がある。
懸念されるのは、環境調和のために農薬や肥料の投入を抑えれば、収量も減る恐れがあるという点だ。基本法の第一の柱、食料安全保障の強化と相反しないだろうか。輸入依存のリスクが顕在化する中で、食料自給率の引き上げは喫緊の課題だ。みどり戦略でも生産力向上を掲げるが、将来の技術革新に期待するところが大きく、見通しにくい。
環境調和に取り組む生産者を支える、所得確保も欠かせない。収量減や負担増を補うために、農産物価格の上乗せを実現できるかが鍵を握る。3月から青果物売り場では、環境負荷を減らした農産物にラベル表示する制度の運用が始まった。付加価値を消費者に理解してもらうため、基本法でも評価手法の開発など必要な施策を講じるとした。
ただ、価格への上乗せは簡単なことではなく、仕組みづくりが必要だ。今後の焦点となる、適正な価格形成の実現は、みどり戦略の推進にも密接に関わってこよう。
環境調和は生産者、消費者双方の協力がなければ広がらず、相当な推進力が求められる。ただ、温暖化が進む中で、地球環境を守ることへの優先順位は確実に高まっている。今以上に、国民のための農政へと発展させていく契機とすべきだ。
政府は、2027年度を目標に新たな環境直接支払制度を導入する。自民党も次期基本計画などに向け、新たな環境直接支払への移行と併せ、農地や地域社会の維持につながるような日本型直接支払制度の有機的な運用を提言する。環境調和を入り口に、奥行きの広い、総合的な政策を検討してほしい。
環境調和や食料安保を掲げた基本法の成否は、実効ある施策づくりと、裏付けとなる予算の確保にかかっている。基本法を具体化する次期基本計画の策定論議は、まさに勝負の場となる。駆け足ではない、徹底した審議を望む。