[論説]認知症高齢者の増加 共生社会へJAが核に
厚労省公表の推計によると、認知症の人は22年時点で443万人、MCIの人は558万人だった。高齢化に伴い、40年には584万人が認知症となり高齢者全体の14・9%、60年には645万人(17・7%)と6人に1人となる。MCIの人は40年に612万人(15・6%)、60年に632万人(17・4%)とされ、認知症の人と合わせて3人に1人の割合で認知機能に影響が現れるという。
こうした中、認知症の人を支える社会保障制度は課題が山積している。介護保険サービスは財源逼迫(ひっぱく)が続き、2000年度の制度開始当初は約3兆円だった費用が、少子高齢化で23年度には約13兆円に跳ね上がった。専門職である介護職員は不足し、解消の見通しはなく、老後の不安は募るばかりだ。
1月には認知症基本法が施行され、今秋にも共生社会の実現に向けた基本計画をまとめる予定だ。認知症になっても人としての尊厳を保持し、希望を持って暮らせる社会を実現するため、課題を整理し、地域で安心して生活できる実効性のある計画としなければならない。
制度・施策の充実とともに進めるべきは、地域の支え合いだ。誰もが年を重ね、認知症になり得る。一人一人が認知症を受け止め、症状に寄り添い、手を差し伸べる。「困ったときはお互いさま」。孤立を防ぎ、支え合いの輪づくりが欠かせない。
JAには、認知症の人に寄り添う土壌がある。認知症への知識を身に付けた「サポーター」は約20万人育成。助けあい組織や女性組織などを巻き込みながら、認知症の人や家族、地域住民が集うカフェを開いたり、認知症への理解を深める寸劇をしたり。こうした活動の広がりが、今後ますます求められてくる。
他にもミニデイ、サロン、体操教室やウオーキングといった、高齢者の心身の健康を支える活動をさまざま展開する。人とふれあいながら心身機能を活性化することは、認知症の進行を遅らせたり、改善につなげたりする効果も期待できる。JAが渉外や営農活動を通して地域の高齢者に声をかけ、見守る。こうした活動を一段と強化することで「地域になくてはならない存在」になる。組合員・住民が安心して暮らせる地域をつくるのはJAの使命の一つ。共に生きる社会を築こう。