
祖父の代から桃を買い取ってもらっているというその女性によると、業者は桃の季節になると、女性の実家がある地域に集荷施設を開く。女性が、その業者の桃だとみる“証拠”は、屋号の入った黄色いコンテナ。交流サイト(SNS)では、このコンテナで桃を売る軽トラの画像が数多く投稿されている。記者が購入した軽トラも同じコンテナを使っていた。
「桃泥棒ではなく、多くの農家が取引している。正確な情報が伝わってほしい」と、この女性。特報班が地元JAにも確認すると、「20~30年前からあり、JAの出荷農家もよく利用している業者」との証言を得た。
このJAは、桃の糖度や外観を基に四つの等級に選果。傷が付いた桃や、まだ硬いうちに収穫した桃は規格外で、ジュースなどの加工原料になることが多い。業者は、こうした桃の一部を引き取っているという。
特報班は8月、この産地を訪れ、業者の集荷施設を突き止めた。桃畑や住宅に囲まれ、“屋号の入った黄色いコンテナ”が山積みになっているのを、敷地外からも確認できる。

しかし「忙しい。取材は一切受けない」。
路上で桃を売る軽トラとの関連性を尋ねても返答が得られない。少しでも話を聞こうと粘ると、男性は「盗品を扱っていると言われ、迷惑している」という。「しつこい。早く帰ってくれ」。男性3人が施設のシャッターを下ろして立ち去ろうとしたため、記者もその場を離れた。
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業者には取材に応じてもらえなかったが、複数の証言から、路上販売の桃の一つの出どころが浮かび上がった。ただ、今回の取材では、桃を仕入れていた業者と、軽トラで販売する業者が同一かどうかは突き止められなかった。業者が仕入れルートを明かさない理由も分からなかった。山梨県警によると、路上販売の桃が盗品ではないかとの情報は警察にも多数寄せられている。だが、これまでの捜査では、農家や業者などから正規に仕入れていたケースが多かったという。ただ、桃の盗難が相次いでいることから、移動販売する車を目撃して不審な点があった場合、県警ホームページの専用フォームから情報を提供してほしい、とする。
一方、都内で桃を直売する山梨県の20代農家からは、通報が多くて困っているとの声が特報班に届いた。駐車場などの場所を借り、露店形式で自園の桃を売っているが「通報されると続けられなくなってしまう」。安過ぎる、明らかに未熟──などの不審な点を「慎重に判断してから通報してほしい」と訴える。
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