<ことば>DX
AIや自動化、データ活用、あらゆるモノをインターネットにつなぐIoTといったデジタル技術で、社会や組織、事業の在り方を大きく変えていくこと。製品やサービスの改善、業務の効率化・生産性向上だけでなく、組織風土などの変革も含む。
伊藤忠テクノソリューションズは、JAの依頼を受けて取り組む信用事業の業務改善の実証について報告しました。信用事業はマニュアルが多く、担当職員は読み込みや理解に苦労していると説明。職員の疑問に対し、かみ砕いた説明ができる生成AIの構築を進めているといいます。
プリマジェストは、資材や肥料の予約購買をクラウド上で完結できる「PiiRepo(ピーレポ)」を紹介しました。手書きの注文書を読み取り、データ化して、JAの業務時間の削減に効果を挙げているそうです。
SmartHRは、人事・労務データの一元管理システムを説明しました。農業分野には季節雇用があり、労務関係の書類のやりとりが多いため、ペーパーレス化で削減できる手間は大きいとします。職員の人事評価や希望する仕事などもひとまとめに管理でき、職員の育成にも役立てられるといいます。
Agrihubは、スマホで作業日誌を記入できるアプリ「アグリハブ」と連携したJA向けのサービスを紹介しました。農家がアプリで記録した作業日誌をJAが確認でき、農薬帳票の回収などをクラウド上で行えるものです。農家は「アグリハブ」を無料で使えるため、導入のハードルが低いのが強みと強調しました。

〝DX人材〟どう育成? 適性把握を
DXを進めるには、どんな人材を育成すれば良いか――。企業のAI導入やDXを支援するエクサウィザーズの伊藤裕司氏が講演しました。伊藤 裕司氏

DXを進める際、学習の機会や環境だけを準備しがちだが、やみくもに学んでも業務に生かされず、定着しない場合が多い。まずはDXの素養を持った人を探すことが大切だ。
どんな組織にも、DXに向いた人が2割ぐらいいる。私生活でデジタル分野に触れるなどして、素養が磨かれることがあるからだ。アンケートやテストでDXの素養やスキルを可視化し、適性のある人材を発掘・選抜するのが第一歩になる。
DXの技術は、間違った使い方をすると事業に悪影響を及ぼすリスクもある。そうならないために全ての職員が基礎知識を身に着けておくべきだ。ただ、全員が高度な専門スキルを身に着ける必要はない。DXに習熟して他の社員をリードする人を、部や課に一人配置する企業が多い。こうした前提を踏まえて人材育成の計画を立ててから、学習環境を整えることを勧める。
その後は、学んだ知識を使って迅速に業務改善につなげていく。生成AIを活用し、2時間かかっていた仕事を1時間にするなどの成果を積み重ねて、活用の機運を高めることが重要だ。
生成AI活用 ポイントは〝明確な指示〟
チャットGPTなどの生成AIは、どんな業務に、どう役立てられるのか。AIを活用した企業向けサービスの開発を手がけるReAliceの船木駿氏が解説しました。船木 駿氏

生成AIは、膨大なデータを瞬時にまとめられる。例えば、企業情報をまとめる場合、人力だとホームページで会社概要を確認し、一つずつメモしていくしかない。生成AIは必要な情報を見つけ出し、即座に一まとめにしてくれる。
手軽に助言がもらえるコンサルタントのように活用することもできる。生成AIへの指示(プロンプト)に「あなたは〇〇の専門家です」という一文を入力するだけ。法律や税務など専門知識が必要な質問でも回答するので、参考にできる。
使いこなすポイントは、プロンプトを明確にすること。回答を求める理由や、得られた回答をどう活用するのかなどをプロンプトに盛り込むと、AIが背景や目的を理解し、解像度の高い回答を返してくれる。人間に指示する場合と同じだ。
生成AIはインターネット上のデータを参照するのが基本だが、独自情報を読み込ませ、その情報を基にした回答ができるAIを構築する技術もある。
当社が関わった能登半島地震の被災者向けAIには、国の支援制度や相談窓口の情報を学習させた。被災者の困り事に役立つ情報を提供し、延べ1500人以上が利用した。
基礎学んでリスク回避を
生成AIの利用にはリスクも伴います。安全に使うための資格試験「生成AIパスポート」を実施する生成AI活用普及協会(GUGA)の内藤正光氏が解説しました。内藤 正光氏

生成AIは文書や議事録作成、アイデア出しなど、さまざまな業務を効率化できる可能性があるが、使い方を誤ると問題が起きる。例えば、存在しない情報を作り上げて回答する欠点がある。
誤情報を信じて仕事で利用してしまえば、大変なことになる。こうした状況に陥らないために、生成AIに関する基礎的な知識を身につける必要がある。
生成AIパスポート試験は、生成AIの基礎知識や注意点、実践的な活用方法を軸としている。これまでに2回の試験を実施し、20代~60代の2644人が受験した。ただ、生成AIの進化は日進月歩。資格を取った後も学習し続ける姿勢を持つことも重要だ。
会員・サポーター 申し込み受付中

