「消費は投票」という言葉があります。私に農業はできませんが、応援はできます。そういう気持ちを持って国産を選んでいます。
毎日、私がご飯を作って家族に食べさせてあげられるのは、農畜産物を作り続ける生産者がいてこそです。当たり前のことですが、生産者がいることの大切さを私たち消費者は、もっと強く認識してもいいと思います。
長崎県のアスパラガス農家を取材したことがあります。その時、初めてアスパラが土からニョキニョキと生えているのを見ました。「畑のアスパラってこんな姿なんだ。チンアナゴみたい」と、すごくびっくりしました。
そのアスパラをおばあちゃんが腰をかがめながら大変そうに収穫していました。おばあちゃんは「腰が痛くなるけど仕方ないのよ」と話していたのですけど、「おいしいから食べてみて」と笑顔で勧めてくれました。実際、その場で食べたのですが、甘味と心地よい苦味があって、言葉通り、とてもおいしかったのを今でもよく覚えています。
家に帰って、子どもに見てきたことを伝えながら、そのアスパラを調理して食卓に並べました。畑でのアスパラの姿やおばあちゃんが頑張っている話をすると、私が現場で聞いた時と同じように、子どもも興味深く聞いていました。
普段はあまり食べないのに、その日は勢いよく食べていました。アスパラを買うたびに、あのおばあちゃんを思い出します。
自分が応援したい「推し農家」みたいな存在ができると、消費者も、もっと農業を身近に感じられるのではないかと思います。
農家に会って話を聞けば聞くほど、消費者は本当にわがままで農業や食を知ろうとしていない側面がある、と痛感します。国産は外国産に比べれば価格が高いです。高い理由も生産者のこだわりが詰まっていたり、天候不順の影響だったりと、しっかりあります。農畜産物を買う際、その裏側をできるだけ想像することが大切だと思います。
生産者にはポジティブな情報だけでなく、農業をやっていての苦労や不安を含め、ありのままを教えてほしいです。本音を知ることで、国産を応援する気持ちがもっと湧いてくる気がします。
私は、形や色がそろっていない野菜を「規格外品」と呼ぶのが好きではありません。人間には、見た目も色も中身も違ってもいいという価値観がありますが、それは野菜も同じ。色むらがあっても、大きさが違っても「同じ大切な野菜」と思う心が求められているように感じます。
わだ・あすか 1987年東京都生まれ。3児の母。料理愛好家の平野レミさんの次男と結婚後、料理を始め食育インストラクターの資格を取得。2018年、ベストマザー賞を受賞。
