
7日正午過ぎ、1、2、5年生の75人が入室してきた。カレーライスの日。みんなうれしそうだ。
カレーは大人になっても忘れないメニューの筆頭格とされ、具材に地元産のジャガイモやニンジンなどを使い、郷土愛を育む地域は多い。日本初の「微細米粉」の発祥地、胎内市は、具材に加え、米粉で作ったルーでハートをつかむ――。
米粉は米どころ、新潟の苦悩と決意の歴史を表す。1970年代以降の米食離れと国の減反政策を背景に、県が汎用(はんよう)性の高い米粉の開発を始めたのは30年前。粒の粗い上新粉は用途が限られていた。
タンパク質を壊さず微細に砕く技術を開発した98年、第三セクター方式で新潟製粉を設立、黒川村に最初の製造工場が出来た。村は給食に米粉パンや米粉麺を出し、2005年に中条町と合併して胎内市になると、米粉カレーが登場。シチューや天ぷらなど給食センターで作るメニューは小麦粉から米粉へと置き換わった。
ランチルームに具だくさんの「胎内米粉かみかみカレー」が運ばれてきた。グルテンのない米粉は小麦アレルギーの子も食べられる。2年の小林紀乃華さん(7)が「普通のカレーよりおいしい」と言い、5年の斎藤花さん(10)は「とろみが優しい」とほほ笑んだ。
消費の85%を輸入に頼る小麦は近年、国際情勢を受けて値上がりし、米粉との価格差が縮まる。小麦粉を使えば市の給食費も1食数円安くなるが、市は差額を補填(ほてん)し、米粉の普及を支える。
市教育委員会の伊藤梢さん(33)が「一食は百聞にしかず」と記者に給食を用意してくれた。米と米とが織りなす破顔一笑の味わいだった。
子どもの命を守る学校給食が注目を集める。全国の多様な取り組みを伝える。