
耕種農業が盛んな同市の小学生は2年前から週に2、3日、その日の給食に使われる農産物の栽培や収穫風景、調理の様子を映像を通じて“体験”する。学校や給食センターの栄養士たちが事前に撮影し、編集。映像と合わせてスライド資料で食材にまつわるクイズも出題する、プロ肌のデジタル食育教材だ。
きっかけは、新型コロナの感染防止のため体験活動ができなくなり、畑との接点が失われたことだった。「せっかく映像教材を作るならば、農作業だけでなく、調理や配送を含む給食ができるまでに活躍する人たちの姿を伝えたいと思いました」。発案者の一人、同小の栄養教諭・小林美穂子さん(45)が振り返る。
給食のメニューは1カ月前に決まる。撮影はそのスケジュールに合わせて栄養士たちが交代で行い、食材ごとのクイズも考案する。

この日の映像は小林さんが6月20日、タマネギ農家の増田勇一さん(54)を撮ったもの。金色に輝くタマネギ畑で増田さんが「おいしいかい?」と笑顔で尋ねると小林さんが「大きなタマネギ。何トン取れるだろう」と問いかけ、子どもたちの想像力をかき立てた。
「袋井で作られた食べ物、何が入っているかな」には、伊藤凌一さん(11)が「スープのタマネギ」と答え、宮城廉さん(11)も「サラダのキュウリ」などと言い当てた。担任の杉本祐理さん(31)は「子どもたちは袋井産の野菜が分かるのです」とうれしそうだ。
「今日のタマネギ、いつもよりおいしく感じた」。小さな“給食博士”たちが言った。情報通信技術(ICT)を活用した取り組みが、地域の誇りを伝え、おいしい給食をよりおいしくしている。
子どもの命を守る学校給食が注目を集める。全国の多様な取り組みを伝える。