
給食センターは食中毒などを防ぐため、施設も職員も厳しく衛生管理されている。アレルギー対応の調理室はさらに厳格な管理をする密閉された空間だ。
対応室に包丁でたたいたり油で揚げたりする音が響く。糟谷さんは指さし確認をしながら、アレルギーのない児童のメニューと見た目が同じおかずを容器に入れた。周囲と「違う」ことで傷つかないようにする配慮だ。カメラは異物混入などが起きた時に原因を特定するため。対応室10年目のベテランだが、気が緩むことはない。
東京都調布市の小学校で2012年、給食を食べた女児がアナフィラキシーショックで死亡した事故を受け、文部科学省が全国の自治体にアレルギー原因物質の混入を防ぐ対応の徹底を求めたのは14年。仙台市はその6年前に対応職員の動線を隔離するため対応室を設け、アレルギー原因物質28品目全てを除去する体制に変えた。
同市では東北最多の2000人の対応食を作る。市健康教育課の丸山龍平係長は「巨大な食数を扱うからこそ万全を期した」と理由を語った。
糟谷さんには忘れられない出来事がある。アレルギーのある生徒の親から「中学を無事卒業できました。9年間ありがとうございました」と手紙が届いた。2児の母としてもその思いが痛いほど分かった。涙があふれた。
JR仙台駅に近い小学校に給食が届いた。アレルギーのある男児の対応食は他の児童のおかずと見た目は同じ。お代わりのじゃんけんに参加できないのは残念だけれど「みんなと一緒に食べる給食は楽しい」。男児が元気な声で言った。
子どもの命を守る学校給食が注目を集める。全国の多様な取り組みを伝える。