
調理場に併設された学食に、芳醇(ほうじゅん)な香りが広がるのは、給食開始30分前の正午ごろ。午前の授業が終わるチャイムが鳴ると、6~18歳の全校生徒35人がカウンターに並んだ。丼に入ったクッパを受け取り、キムチをたっぷり皿に盛って「チャルモッケスンニダ(いただきます)」。
同校では生徒と教員が学食で一緒に給食を食べる。朝鮮語の会話が飛び交う中、初級2年の朴在怡さん(7)がクッパを頬張り「マシッソヨ(おいしいね)」と笑顔。●さんが「今日も報われた」と感じるひとときだ。
朝鮮学校は日本が朝鮮半島を占領していた時代から日本で暮らす朝鮮人たちが戦後、母国語教育のために各地に創設していった。政府は義務教育課程として認めておらず、給食調理の人件費や光熱費の補助はない。
全国63ある朝鮮学校の大半は弁当で、同校のような給食は少数派だ。朴大宇校長は「朝鮮料理は手間もかかるから、家庭ではなかなか味わえないものがある。給食は続けたい」と言った。生徒1人の給食費は1カ月1万円前後だが、それでも赤字で、支援者らの寄付で賄われている。
同校の給食には週に1、2回、ビビンバやナムルなどの民族料理が出る。年明けの旧正月に食べるトック(朝鮮の餅)は大阪・鶴橋のコリアンタウンから取り寄せたものだ。
キムチは生徒の母親らが月に1度“秘伝のレシピ”で漬ける。レシピを考案した金貞美さん(53)が「イカやアミエビの塩辛で自然発酵させるのが本場流。日本の市販品とはコクの深さが段違い」と胸を張る一品だ。
編注=●は部首の「クサカンムリ」に内
子どもの命を守る学校給食が注目を集める。全国の多様な取り組みを伝える。