

昨年11月に島内全校で始まった「お助け揚げ」は、特産のアワビやサザエなどの餌となる海藻を食い荒らして海の砂漠化を招いたイスズミやアイゴといった「食害魚」と、米や野菜など農作物を荒らす「食害獣」の鹿やイノシシを使った甘辛揚げ。「食べて対馬の自然を守ろう」という思いから名付けられた。
市水産課によると、熱帯海域原産のイスズミやアイゴは暖流に乗って以前から対馬近海にもいたが、地球温暖化に伴う海水温の上昇で増殖。沿岸漁業は大打撃を受けた一方、特有の臭みが嫌われて流通せず、網にかかると捨てられていた。
市自然共生課によると、イノシシは江戸時代、全島挙げた捕獲作戦で絶滅したが、30年前から再び繁殖。鹿は56年前に県の天然記念物に指定されたが、増え過ぎて農林業への影響が深刻化。22年前に駆除対象に変わったが、被害は増え続け、島内の農地は高いフェンスで囲われている。

お助け揚げが21日、アイゴなどの繁殖海域を望む南部の豆酘(つつ)中学校で出た。3年生の中村匠さん(15)が「んまい!」と感動し、栗原美羽さん(14)は「食べて理解できた」と言った。
栄養教諭の阿比留智子さんが「害獣も獣財です」と説明すると、佐伯優斗さん(14)、阿比留輝空さん(15)、廣幡りりさん(14)がうなずいた。
捕まえた鹿やイノシシは革製品にも活用される。島出身の阿比留喜盛校長が言う。「対馬は昔っからSDGsばやっちょるとです」
子どもの命を守る学校給食が注目を集める。全国の多様な取り組みを伝える。