

東京・日野市役所5階、農地が混在する市街地を見晴らす大会議室は、毎年4月になると、市内各地から100人前後の“学校給食関係者”が集う。
関係者とは、野菜や果物の農家、同市を管内に持つJA東京みなみの代表者、小中各校の栄養士や市職員。同市の給食は学校ごとに調理場がある自校式で、栄養士の注文をJA担当者らがさばき、農家に確認しながら、年間の栽培・供給計画を決める。3年前に地区を超えた受注調整も始まり、2022年度に日野産農産物の使用率は3割を超えた。
会議メンバーの同JA組合長、小林和男さん(67)も40年前から野菜を供給する農家。「給食に安心安全な地場産を出すことで、都市農業の現場にやりがいが生まれ、後継者も増えている」と語る。
同市が特産品のトマトを全国で初めて給食調理場でピューレに加工して長期保存できる瓶詰めにし、通年で給食に使えるようにしたのは今年8月。アイデアが飛び出したのも会議を通してだった。
「規格外や作り過ぎたトマトを給食に使えないか」。農家側と栄養士側の思いが一致し、市教育委員会は設備基準を満たしていた平山小学校の調理場で製造許可を取得。8月下旬、完熟トマト98キロをピューレにし、希望した12小中校に届けた。
市教委学務課が調べると、ピューレは瞬く間に使われていた。チキンライス(豊田小)、チリコンカン(日野第五小)、ひのっ子ベジ活ライス(南平小)、なす入りスパゲッティアラビアータ(日野第三中)、トマトとレタスのスープ(平山中)など各校で違うメニューになっていた。
給食調理員の柳下恵美さん(57)が言った。「日野が誇るトマトのピューレを日野の子どもたちがいつでも味わえる。調理員もやりがいを感じています」
子どもの命を守る学校給食が注目を集める。全国の多様な取り組みを伝える。