

この日の給食は町産アンガス牛を使った「デリシャスアンガスバーガー」。1年の寺村陸さん(7)は、2枚の丸パンに牛肉とタマネギの炒め物、薄切りトマト、ゆでキャベツをはさみ、口いっぱいに頬張った。
メニューを作ったのは町内にある道立標津高校(標高)の3年生24人。選択科目「フードデザイン」の授業で、初めて給食のメニューを考案。「高校給食ウィーク」(同11~15日)として町のこども園と小・中・高校に提供された。
人口5000人の町の基幹産業は、酪農と水産業。町民にはサケ1匹とバター400グラム、ホタテ4キロが毎年無料で配布されている。
そんな自慢の特産品を使い「子どもに喜ばれる給食を開発したい」と24人は4月からメニュー作りを始めた。地元漁協の協力でサケの解体を学んだり、畑で育てた野菜を調理したりと試行錯誤を繰り返し、オリジナルの味を完成。3年の加藤悠仁さん(18)は「オリジナル給食を食べた一人でも多くの児童・生徒に町の魅力が伝わるとうれしい」と話した。

他の日も、町産の鹿肉と地元銘菓「標津羊羹(ようかん)」を隠し味に使った「しか肉ようかんカレー」など独創的で斬新なメニューが並んだ。
標津高は町内唯一の高校で、各学年20~30人と小規模だ。生徒のうち町出身は3割で、町が目標にする5割には届いていない。
町は入学者を増やそうと通学費や寮費を全額補助。JA標津やPTAなども「標津高校教育振興会」をつくり、農林漁業や環境を学ぶ授業に講師役を派遣するなど、魅力ある学校づくりを支える。
「高校給食ウィークを通じて標高に興味を持ってほしい」と町教育委員会の朝倉一正・管理課長(52)。「町の子どもたちが『ここで学びたい』と思える高校にしたい」
子どもの命を守る学校給食が注目を集める。全国の多様な取り組みを伝える。