

琵琶湖だけに生息するホンモロコは、体長10~15センチで骨が柔らかく、油で揚げれば丸ごと食べられる。この日の副食は、甘酢を絡めたホンモロコの唐揚げ。5年の水口優芽さん(10)は「ちょっと苦味があるけど、魚特有の臭みがなく癖になる」と笑顔で言った。
米は滋賀が誇る市産「みずかがみ」、サラダのハクサイやワサビ菜も地場産品。ホンモロコを含むこうした食材は「琵琶湖システム」の中から生まれる。
日本最大の湖、琵琶湖には117本の一級河川が直接流れ込む。下水道が整備されていなかった1970年代、家庭や農工業の排水で汚染され、赤潮や水草が大量発生。多くの固有種が姿を消した。
その後、下水道が普及すると県は2001年、農業者とも連携し、化学農薬や化学肥料を慣行の半分以下に削減して泥水流出などの対策をとった米や野菜を「環境こだわり農産物」とする、全国の先駆けとなる認証制度を導入した。琵琶湖は透明度を回復し、多様な生き物が戻ってきた。その象徴がホンモロコなのだ。
県の経営耕地面積4万3000ヘクタール(21年)のうち、農水省の環境保全型農業直接支払交付金の実施面積は全国トップの3割。長い歳月をかけた地域ぐるみの成果は、「森・里・湖(うみ)に育まれる漁業と農業が織りなす琵琶湖システム」として22年7月、世界農業遺産にも認定された。
「給食を通して命がつながる水循環を学んでもらえれば」。同校の栄養教諭、澤田妙子さん(54)が地場産食材にこだわる理由を語った。同市の全ての小学校は自校調理式。各校の廊下には琵琶湖システムと給食との関係を図解した張り紙が張られている。
5年の奥野結仁さん(10)が言った。「米や野菜の育て方で湖がきれいになり、給食もおいしくなるんだね」
子どもの命を守る学校給食が注目を集める。全国の多様な取り組みを伝える。